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恋する女子達1 ハナの秘密
     やっばーい!!小学5年生のハナはぎゅっと手を握りしめ爪を隠した。
だって爪には
木・村・君・好・き
と水性ペンで書いてあるんだもん。落書きしたら消えなくなったんだ。
そして、目の前には片思い中の木村君がいる。
ハナの爪を見ようと。爪にはハナの秘密が書いてある。絶対絶対見せられない秘密…


「清潔検査しまーす。」
保健委員の木村君は教室の黒板の前でみんなに言った。
清潔検査とは、爪・ハンカチ・ティッシュの3つをチェックする検査だ。
木村君は順番に爪を見て歩いてる。
あと10人もしないうちにこっちに来ちゃう!!


こんなみんながいる教室でコクハクなんてやだ―!
そういうのって学校の裏とか中庭とか誰もいない静かな所とか
遊園地とかどっかロマンチックなところでするものでしょ!?
しかも、なんで爪に書いてコクハクなんて間抜けすぎる…


ハナは目の前が真っ暗になってきた。あと1人でハナの番だ。
…来た!


「いたたた!おなかいた―い☆」
とっさにハナはおなかを押さえた。
このまま逃げちゃえ…保健室に行こうと立ち上がろうとしたとき、
ふわっと体が持ちあがった。
「え…?」


目の前には木村君の顔があった。
斜め下からすっごい近くで見る木村君の肌はキレイに日焼けしていた。
いってんぽ遅れて心臓がバクバクしてきた。口から飛び出すんじゃないのかしらん。
ホントにこういうときって星が目の前にちかちかするのね。
木村君ってちから強いんだ。パニックの頭のすみっこでちらりと考える。


あっという間に保健室についた。教室を出るときすごいざわついたのはなんとなく覚えてる。
保健室には誰もいなかった。


「大丈夫?先生呼んでくるよ。」
ハナをベットに寝かせると、木村君はそう行って走り出そうとした。
「待って!!」
ハナは思わず木村君の手を握った。


保健室の窓が開いていたらしく風がカーテンを大きくふくらました。
ばさりと音を立ててカーテンははためく。


誰もいない保健室。木村君と2人っきり。サイコーのシチュエーションじゃない!
今なら言える。ハナの顔は真っ赤になった。
「わ、わ、わたし…」
震える声をしぼりだす。その時、あ…と小さく木村君が呟くのが聞こえた。
視線はハナの爪にあった。
ハナの体温が氷をドボドボ入れたみたいに急速に下がった。


自分で言いたかったのに…瞳から涙があふれる。
胸がいっぱいで苦しくってなんにも言葉にならない。


それから帰る時間になるまでハナは保健室で泣いていた。
保健室の先生は何も言わずそのまま泣き止むまでいさせてくれた。


真っ赤な夕焼け。ひりひりと痛む胸は色にしたらこんな感じだろう。
とぼとぼ帰っていると鉄棒の所に木村君がいた。
くるんと一回前回りしてこっちに走ってきた。
ハナの顔は真っ赤になったけど、夕焼けで見えなかった。


2人は、話しながら歩いていった。
長く伸びた2人の影の手が一つになった。


2003.6.19.
モノクロワールドとgirls in loveについて
モノクロワールドとは、2003年から1年間、管理人ダウが書いていたテキストサイトのタイトルです。
テキストのシリーズには、「恋する女子達」という恋をテーマに書いた短いお話も入っていました。
このタイトルが今のサイトの名前の原型です。


今、モノクロワールドはなく、
いつ壊れるか分からないパソコンの中にひっそりとテキストたちはいます。
それは何だか寂しいなと思い、またひっそりとgirls in loveにアップしてみました。


検索でひょっこり来てしまったアナタ。
お暇つぶしによろしかったらお読みください。


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