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恋する女子達15 ハチミツ
     銀のスプーンからとろりと溢れ出す
黄金色の液体

こんがりと焼いたパンにたっぷりと塗る。
パクリ。
口の中に広がるは


ハチミツ


ハチミツって、恋の味がする。
そんな気が檸檬−れもん−はしていた。

「檸檬。あんた、まだ食べてるの!?」
お母さんのびっくりした声が後ろでする。
もう、もっとゆっくり味わいたいのに。

「いいでしょ。ハチミツは別腹なの。」
ゴクンとミルクを一口飲む。
口の中のハチミツが幸せの味になる。
恋って、幸せの味もするんだな。

檸檬は一人納得しながら、真っ赤なランドセルを背負った。
早く学校に行こう。
だって、タカシ君に会えるから。
「いってきまーす。」
長く伸びた髪を揺らしながら檸檬は
元気に走って行った。


だけど、早すぎたのか教室には誰もいなかった。
朝日が窓際のメダカの水槽を照らしている。
急に檸檬は寂しくなってきた。
片思いはなんだか切ない。
胸が苦しいのは、ハチミツの食べ過ぎかな
それとも恋のせいかな?

なんで、こんなにタカシ君のことばっかり
考えちゃうんだろう。
バトミントンクラブの事や、今日の算数のテストの事とか
昨日のドラマの話とか、考えなきゃいけない事がいっぱいあるのに
気がつくと頭の中はタカシ君のことばっかりだった。

ふう。恋って、苦しいんだね。
ため息をつきながら、ぼんやりと運動場を見ると、
砂場でスタートダッシュの練習をしている人を見つけた。
心臓がドキン☆とする。
タカシ君…
陸上の大会が近いから朝練してたんだ。

ポチャン
水槽のメダカが飛び跳ねた音がした。


あれは、4月の半ば。
私は生き物係になったので、メダカに餌をやるために
早く教室に来た。
一番乗りだと思ったら窓際で男の子が何か食べてた。
「お前も食う?大好きなんだ、ハチミツと檸檬。」
その男の子は、にこっと白い歯を見せて笑ったのだ。

その瞬間

その笑顔と
ハチミツと
自分の名前が
すごく すごく 大好き に なっていた。


それがタカシ君との出会いだった。
ランドセルの中からハチミツの入った小ビンを取出す。
薬指でハチミツをとって唇に塗る。
グロスみたいに。

ハチミツは別腹。
恋も別腹。

いろいろしなきゃいけない事は
あるけど、恋は別腹。
檸檬は窓におでこをくっつけて
ずっとずっと運動場を見ていた。


2004.6.8.


モノクロワールドとgirls in loveについて
モノクロワールドとは、2003年から1年間、管理人ダウが書いていたテキストサイトのタイトルです。
テキストのシリーズには、「恋する女子達」という恋をテーマに書いた短いお話も入っていました。
このタイトルが今のサイトの名前の原型です。


今、モノクロワールドはなく、
いつ壊れるか分からないパソコンの中にひっそりとテキストたちはいます。
それは何だか寂しいなと思い、またひっそりとgirls in loveにアップしてみました。


検索でひょっこり来てしまったアナタ。
お暇つぶしによろしかったらお読みください。


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