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恋する女子達2 沙羅の幼なじみ
     「友也ー!はやく学校行かないと遅刻するよー!!」
沙羅はいつものように友也の家の玄関で2階に向かって叫んだ。
友也とは家が近所で中学校に行くのは毎日一緒だ。

「おはほう。」
友也が食パンをくわえて出てきた。
「あんた、マンガじゃあるまいし朝ご飯くらいちゃんと食べなさいよ。」
2人は少しはや歩きで学校へと急ぐ。
「朝ご飯は食ったよ。デザートだよ、デザート。」
なんで食パンがデザートなのか分からないが、最近の友也はよく食べる。
そのせいか急に友也の背は伸びた。
ちょっと前まで私のほうが高かったのに…横目で友也をちらりと見る。
眠そうだった。


教室に入る別れ際、ちょっと照れ笑いしながら友也が言った。
「今日ちょっと公園に来てくれない?用事があるんだ。4時に南の公園ね。」
それだけ言うと友也はすたすたと行ってしまった。なんだろう。沙羅はなんだかそわそわした。


「彼女が出来たんだ。山下さん。」
南の公園の片隅でおとなしそうな可愛い顔の女子がこんにちはと頭を下げた。
「俺、ジュース買ってくるわ。山下さん何が飲みたい?」
友也はいつもと全然違う優しい声を出して彼女に尋ねた。

ポカンとしている沙羅の頭をはたいて友也は走りながら
「お前はいつものだよなー!」
と言いながら、向こうの自動販売機に行ってしまった。

「先輩からいつも沙羅先輩の事聞いてます。」
山下さんがややあって口をひらいた。じっと沙羅を見つめる。
「実際あってみるとたいしたことないんですね。」


「何よ―!あの猫かぶり女!!」
沙羅は自分の部屋にいた。クッションを壁にぶつける。
あの後、適当にごまかして帰ってきた。
「なんであんな事言われなきゃいけないのよ。」
なんだか心にぽっかりと穴が開いたようだ。
沙羅はぼんやりと宙を見つめた。
何故こんなにむなしいんだろう。頭がうまく回らない。
ずっと友也とは同じ関係が続くと思ってた。仲の良い幼なじみ。
なのに急に友也が遠い所に行ってしまったような気がした。
さみしい
こんなにさみしいと思ったのは初めてだった。
世界で自分だけが取り残されたような気分だった。


「ちょっといいか?」
お父さんが急に入ってきた。
「来週引っ越すぞ。」
「え?」
沙羅はあまりに急なことが多すぎて頭がついていかなかった。

父の話しだと、いいマンションを友達から譲ってもらったらしい。
しかも、早くそのマンションに入居しなければならないらしい。


あっという間に一週間が過ぎて、今は新しい家に向かう電車の中だ。
ぼうっと外を眺めていた。
その時、凄いすぴーどで走る自転車を見つけた。
友也だった。
電車の窓を急いであける。
「友也!」
沙羅は叫んだ。
友也は顔を真っ赤にして叫んだ。
「毎日メールしろよ!!離れていても心はずっと一緒だかんなー――!!!」
あっという間に友也は小さくなった。
沙羅はぽっかりと開いた心の理由が分かった。
ずっと友也のことが好きだったんだ。

「馬鹿ね。」
沙羅は、ひとり呟いた。


ホームに降りながら、沙羅は携帯を開く。
「もしもし、友也?そのまま隣駅まで自転車で来て。
何勘違いしてんのよ。私、引っ越すけど学校は変わらないわよ。
だって、近くに引っ越すんだもん。」
友也はもうすぐ汗だくになってやってくるだろう。
そしたら友也に言うんだ。

ありがとうって。


2003.6.21.


モノクロワールドとgirls in loveについて
モノクロワールドとは、2003年から1年間、管理人ダウが書いていたテキストサイトのタイトルです。
テキストのシリーズには、「恋する女子達」という恋をテーマに書いた短いお話も入っていました。
このタイトルが今のサイトの名前の原型です。


今、モノクロワールドはなく、
いつ壊れるか分からないパソコンの中にひっそりとテキストたちはいます。
それは何だか寂しいなと思い、またひっそりとgirls in loveにアップしてみました。


検索でひょっこり来てしまったアナタ。
お暇つぶしによろしかったらお読みください。


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