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ミセスウェディング
「ちょっと、正!!あんた何で残してるの!?
きちんとたべなあかんやろーーー#」
朝から私こと小松 光子は怒りモード。後ろでは、清と純がばたばたと走り回ってる。
「はあい。」
正はしぶしぶカップラーメンの残った汁を
ご飯にかけた。
「そう。ちゃんとカップラーメンは汁まで飲むんやで。
栄養がいっぱいはいっとるんやさかいな。」
満足そうに私はにっこりと笑い布団を干し始めた。
お隣のおばあさんちから聞こえてくるテレビの音によると
今日は快晴の様だ。
日差しがきつい。
よっしゃ、今日もがんばるでえ!!


ミセス・ウエディング −その1−

「あんた。昨日のネタにオチついたんか?」
そう言いながら、私は寝転んでボーっとしている旦那を蹴飛ばした。
私の職業は「お笑い」。
旦那と二人で”ヒグラシ”というコンビを組んでいる。
組んだときが貧乏日暮だったからだ。
今もその時と変わらず貧乏生活を歩んでいる。
もしかして、コンビの名前が悪いのだろうか?


「んー。そやなあ。
ついた…ゆうたらついたし…つかへん…ゆうたらついてないなあ。」
「そりゃ、ついたゆわんのんじゃ。アホ。」
旦那は、かなりの優柔不断でハエが止まりそうな話し方をする。
一緒に話すと私の方が5倍くらい早い。
「…ん。そやけどな。このオチは自分ではなかなか…いいような…気がしないでもないなあ。」
「あ。パートの時間やわ。ほんなら完璧なオチを帰るまでにはつけといてよ!」
旦那がもごもごと言っていたが時間がないので無視してパートに出た。


うちらはいつになったら売れるんやろなあ。
玄関先でおてんとさんに聞いたけど
答えてくれるわけもない。
「ぎゃーっ、おかん!清が床ぶちぬいたでー!!」
正の叫び声が聞こえた。
発声練習もこめて玄関から家の中に叫ぶ。


「アホ!ばたばたするからやろ!!コンビニでダンボールもらって直しときや!!」
これで家の床は半分以上がダンボールになってしまった。
カセットコンロを使ったら火事になってしまうかもしれない。
まあ、カセットコンロを使うような高級料理は作らないから大丈夫だけど。


ふう。
駄目旦那一人とアホな子供たち三人養うには
私が立ち止まってる暇なんてないんやなあ。
ちょっとだけ疲れた自分の顔がショーウインドウに映った。
??


ショーウインドウに映った自分の顔の向こうは白くてふわふわしたもの。


なんや―??
ああ、そういえば新しいお店の工事しとったなあ。
えらい、キラキラふわふわしたもんやなあ……


ぼんやりと眺めていた私の焦点が定まったとき
どきんと胸が高鳴った。


ううううううウエディングドレスやぁぁぁぁぁぁぁぁ


「ぐにゅうむ。」
あまりの感情の高まりによく分からない言葉が
腹の底から漏れ出てしまった。
決して尻からではない。


きれいキレイきれいキレイきれいキレイきれい
うわぁ。ごっつキレイやなあ。


私の目はもう釘付けだった。
目から星が出て、頭からは湯気が出ていたかもしれない。


「うち…うち…結婚する!!!」


気がついた時にはそのドレスに向かって叫んでいた。


……あ、うち結婚しとったんや。
そんな簡単なことに気がついたのは
パートでポテトサラダに20円引きのシールを貼っているときだった。


モノクロワールド
     モノクロワールドとは、2003年から1年間、管理人ダウが書いていたテキストサイトのタイトルです。
テキストのシリーズには、「恋する女子達」という恋をテーマに書いた短いお話も入っていました。
このタイトルが今のサイトの名前の原型です。


今、モノクロワールドはなく、
いつ壊れるか分からないパソコンの中にひっそりとテキストたちはいます。
それは何だか寂しいなと思い、またひっそりとgirls in loveにアップしてみました。


検索でひょっこり来てしまったアナタ。
お暇つぶしによろしかったらお読みください。


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