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ミセスウェディング2


「後方確認、よし!」
「前方確認、よし!」
「隊長、異常ありません。」
「よし…。」
ごくりと唾を飲み込み、言った。
「行くぞ!」
意気揚々と電信柱の影から出てきた3人の影。
手には


パンの耳の袋


ミセスウエディング2




「あらー、正ちゃん?パン耳なんか持ってー。」
まずは和菓子屋のおばちゃん、サチコ。
「これ、余ってるさかい持っていきやー。」
デザート確保!


「おいおい、清坊?パン耳がご飯かあ?」
次は八百屋…山田のおっちゃん。
「うちのおかんには、内緒やでえ。これやるわ。」
野菜ゲット!ついでに、大根の葉っぱも…。


最後の難関…人の波が途切れない揚げ物や。
「やばいで、兄ちゃん。よーさん、人がおる。」
「待て!焦るな!!タイミングが肝心や!」
が、ターゲットまで20メートルもない。無理か!?
「兄ちゃんら、ここにおって。うち行ってくるわ。」
純がパンの耳をひったくって飛び出した。
「やめろ!無茶はするな!!」
「深追いは禁物やで!!」


純はすたすたと人の波に近づいていく。
どうする気なんだ!??


「こんにちは、ミサちゃんとこのおばちゃん♪」






「トーンかつ!トーンかつ!!トーンかつ!!!」
3人はジャンプしながら、戦利品を高々と持ち上げた。
「したらあかんゆーたやろ!!!!」
小松光子はパン耳の野菜炒めを作りながら怒鳴った。


「ジャンプはしたらいかん!!!!床がまた抜けるでぇ。」


窓ガラスがびりびりと揺れるくらい怒鳴っても、3人はまだ浮かれていた。
今度は、トンカツダンスを編み出し、踊り始めている。


ふう。
こんな生活で、ドレスなんか夢のまた夢なんやなあ。
現実にあるのは、パン耳の野菜炒め…と、トンカツか。
……うまそうやなーーー


「いっただきまぁーーーーーす!!!!」


家族全員で家が揺れるくらいの合唱をした。
猫が屋根から転げ落ちたのを見てゲラゲラ笑った。


いいんや。このまんまで。
ドレスなんか着んでも、おもろい家族がおるんやから。


……でも……でも……


しろいふわふわのレース
真珠みたいなのがよぉさんついてて
華の刺繍が……


「光子?どうしたんやぁ…??」
目をあけると旦那が心配そうに覗き込んでいた。真夜中の寝室(物置改造)。
「えらい、うなされとったでぇ…。鼻毛がどうとか…。」
汗をびっしょりとかいていた。
心臓がどきどきしている。やっぱり…やっぱり……


「うち、欲しい物があるねん。」
手が震える。
「んー…なんや、めずらしいなあ…。肉かぁ?今日食ったやろぉ…?」
「違うんや。うち…うち…ドレスが欲しいねん!」
「あー…わかったぁ…。」
すんなりと了承がとれた。
へ?こっちが拍子抜けするくらいだ。
「…その方が漫才にインパクトがでるもんなあ…。まっキンキンのやつかぁ…?
それともヒョウ柄かぁ…?」
「ちがーーーーう!!!」


それから、滝のように今日見たドレスがどのくらい素晴らしかったか、
美しかったか。その出会った瞬間の胸のときめきの凄さを語った。


話し終わったら、息が切れていた。ゼーハーと息をしていたら旦那がぽつりと言った。


「…で。なんぼなんやぁ…?」


「120万。」


しーん。
5分後
しーん。


「ああっ!旦那が息してない!!」
旦那が白目を剥いていた。
「正ーー!!水や!!水持ってきてーーーー!!!」
「ん〜?あっ。おとん!!?」
この状況を見て、慌てて台所に走っていった。


「あぁ〜。おかん、水道止められとるでぇ〜!!」


あぉーーーーん


遠くで犬の泣き声が聞こえた。




モノクロワールド
     モノクロワールドとは、2003年から1年間、管理人ダウが書いていたテキストサイトのタイトルです。
テキストのシリーズには、「恋する女子達」という恋をテーマに書いた短いお話も入っていました。
このタイトルが今のサイトの名前の原型です。


今、モノクロワールドはなく、
いつ壊れるか分からないパソコンの中にひっそりとテキストたちはいます。
それは何だか寂しいなと思い、またひっそりとgirls in loveにアップしてみました。


検索でひょっこり来てしまったアナタ。
お暇つぶしによろしかったらお読みください。


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