恋する生活 生活に恋する
girls in love
バナー 10000047


 カテゴリ
 ショップ一覧
 読み物など
ミセスウェディング3
「なあ…光子…。上方お笑い大賞の賞金なんぼや……?」
旦那がぽつりとつぶやいた。
「上方…お笑い大賞……?」
「そうや……お笑いのノーベル賞…お笑いのフィールズ賞…お笑いの関孝和賞…おw」
「もーえーっちゅーねん」
ばちっ!肩の辺りを思いっきり叩く。
「あかんって、ゆーてるやろ!もっとメジャーなたとえにせんと!!なんや?関口宏ショーって!!??」
「ちg…」
「もーえーわ!上方お笑い大賞の賞金は100万や!!憧れのあの賞は100万や!!!」
旦那はため息をつきながら、そういうこっちゃ…とぼそりと言った。
「わかっとる。わかっとるんや。あのドレスは20万も高いちゅーことは。」
光子はめずらしく弱気になる。
「……でも……ほしいんや……。」


ミセスウエディング3




「おかんーーーー!見てーーーーー!!!!」
清が絶叫する。
「ピラミッドーーー!!!!」
見るとトランプの要領で、パンフレットを使って器用にピラミッドが出来ていた。
「あー。上手やなぁ〜…って、遊ぶな!アホ!!」
ごちんと清の頭にゲンコツを入れる。ばさばさばさっとピラミッドは崩れていった。
「ぎゃーー。おかんのアホーーーー!!」


「なあ、おかん。こっち向いて。」
純が甘ったれた声で背中から抱きついてきた。
「なんや?」
「はい。」
手渡されたのはゴミ……ではなくて、ドレスの写真をちぎったもの。
「これで我慢しいや。」
純の笑顔は天使だが、やる事は鬼や。
「んで、うちの時はこれがええ。」
差し出したのは綺麗にカッティングされたドレスの写真(ラミネート加工済)。
「どうしたんや?こんなんして。」
「同じクラスの拓也くんにしてもらったんや。お金持ちやから。」
「そか。じゃあ、うちは手でちぎった写真で我慢して…って、できるか!」


「なんで純はたたかへんのや!!!ひいきや!!ぎゃーーーーー!!!」
清はまだ泣いていた。


「それより、おかん。パンフレットこんなにもらってどうするんや?」
正が鋭いツッコミをしてきた。さすが長男。
「あ…そそそれはやな。タダやからな。」
「パンフレットはな。」
ばさりとパンフレットの一つを目の前に広げた。


「テーブルのカード1枚から金とられるで。」
そうなんや…テーブルの花一つやらカード一枚やら
存在するものすべて金がぼられることが
タダのパンフレットでよく分かった。
しかも、安いのは見るからにへぼい。横に目が移るごとに立派に高くなっていった。
ケツの毛までむかれそうや。


「おとんはドレスも許してないんやろ?どーすんや、このパンフの山。」
「みるだけや!みるだけ!!!」
「ドレス買ったら、式もやろうって思うとるんやろ!」
ぎくーーーーー


「ちゃうで!ちゃう!ちゃう!」
背中に滝のように流れてきた。


「そこで、考えたんや。」
正は、ばさりと新聞紙を広げた。しかも、でかい。床一面だ。
「拓也くんにのりを借りたんや。純も手伝ったんやで。」
そう言いながら、純が腕に絡み付いてきた。
糊付けされたでかい新聞紙一枚の真ん中には穴が開いている。
「俺も手伝ったんやでーーー!!!!新聞紙拾ったんや!!!!!」
清が叫ぶ。


よく見ると黒い線で何か描かれている。
黒い字がびっしりの新聞紙に黒い線なので分かりにくいが…これは…
……ウエディングドレス……と家族のみんなの絵。
習字の筆で描かれていた。


「これの穴におかんが顔はめて写真とるんや。」
自信たっぷりに正が言った。
「ハワイが良かったらヤシの実かくで。」


いや…正…そういうことじゃ…



「あ、写真は隣のクラスの竜也くんが撮ってくれるって。写真屋やから。」


いや…純…そういうことでもなくて…


「俺…俺…俺もなんかするーーーー!!!ぎゃーーーーーー!!!!!」


いや…清…なんもせえへんでええ…


「うち…パートの時間やから。行ってくるわ。」
がっくりうなだれて光子はサンダルをはいた。
「正。清。純。」
振り返って子供達を呼ぶ。







ひとつ深呼吸






「風呂掃除と洗濯と食器洗いと床掃除しときよ!!!!
あと、天気ええから布団干しときーー!!!!!!」
発声練習代わりに家が揺れるくらいの大声で言う。


「あ!!!野球の時間や!」
「私もレノンくんと約束が。」
「僕も図書館に…」


…レノンって誰や?
いやいやいや、そんなことより
「自分の仕事してからやっ!!!!!」
どたどたどたっっ
3人のけたたましい足音がしたかと思ったら
家がシーーンとなった。
……逃げやがったな……#


この家は妄想すら出来ないのか……
散らかったパンフレットの山と床一面に広がった新聞紙にがっくりした。




2004.10.21

モノクロワールド
     モノクロワールドとは、2003年から1年間、管理人ダウが書いていたテキストサイトのタイトルです。
テキストのシリーズには、「恋する女子達」という恋をテーマに書いた短いお話も入っていました。
このタイトルが今のサイトの名前の原型です。


今、モノクロワールドはなく、
いつ壊れるか分からないパソコンの中にひっそりとテキストたちはいます。
それは何だか寂しいなと思い、またひっそりとgirls in loveにアップしてみました。


検索でひょっこり来てしまったアナタ。
お暇つぶしによろしかったらお読みください。


→モノクロワールドもくじにもどる

+ PR +
バナー 10000018