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惑星旅行

「惑星旅行」
(天文関係スライドシナリオ作品)



<満天の星空。小さな列車の音がする。タイトル>


修太郎:満、ご覧よ。綺麗だね。ほら、地球が見えるよ。太陽系の惑星には二つのタイプがあるんだ。一つは…。


<修太郎の声を掻き消すように汽笛。ハッと目覚める満。そこは、授業中の教室。>


満:夢か…。
先生:ですから、太陽系では九つの惑星が知られています。これは…。
満(心の声):(僕は斜め前の席を見た。その机の上には綺麗な菊の花を活けた花瓶が乗っている。僕の幼なじみの…。)
先生:では、満さん。
満:は、はい。
先生:今の質問に答えて。
満:ええっと…あの…聞いてませんでした。


<クスクスという笑い声。音楽流れ場面転換。満が一人河原で横になっている。>


満:あーあ。昼は恥かいちゃったなあ。先生もひどいよ。僕に当てるなんて。
(そういって、僕は河原に寝転がった。)
満:それにしても、綺麗な星。星空に吸いこまれそうだ。
修太郎:そんなに乗り出すと、本当に吸いこまれるよ。


<汽車の音。場面はいつの間にか列車の中。>


満:修ちゃん?(僕はいつの間にか列車の中にいた。)
修太郎:どうしたんだ、満。
満:い…いや、なんでもないよ。それより、ここは…?
修太郎:何、寝ぼけてるんだよ。もうすぐ火星に着くよ。
満:火星?
修太郎:今、太陽系をめぐっている所じゃないか。次の火星で20分の停車。それから、水星で乗り換え
満:そうだっけ?太陽系かあ…そういえば、太陽系って二つのタイプの惑星があるんだよね。
修太郎:そうそう。ひとつは固体の表面を持つ「地球型惑星」
満:水星・金星・地球だっけ?
修太郎:あと、もうすぐ着く火星も地球型惑星だよ。
満:そうだった。もう一つのタイプは?
修太郎:もうひとつは、ガスの表面を持つ「木星型惑星」で木星・土星・天王星・海王星がこのタイプに入るね。
満:あれ?冥王星は?
修太郎:冥王星は木星型の領域にあるんだけど、固体の表面を持っているんだ。
満:へぇ。
修太郎:それから全ての天体は規則性を持った運動をしているんだ。
満:惑星だったら楕円運動みたいなやつだね。
修太郎:そうそう。
満:懐かしいなあ。昔よく一緒に星の本を読んだよね。
修太郎:ああ。…あ、火星だ。20分停車するから降りてみようか。
満:うん。


<火星に降りる。>


満:うわあ。寒い。
修太郎:マイナス30度からマイナス100度もの冷たい星だからね。
満:へえ。あ、今度は凄い崖。
修太郎:多分、峡谷じゃないのかな。
満:峡谷?
修太郎:ああ、火星表面には多くの谷や火山なんかがいっぱいあるんだ。あと、高地や低地なんかもあって、大体赤道から30度傾いた円の南半分には高地が。北半分には低地が広がっているんだ。
満:高地って、どれくらい高いの?
修太郎:そうだね。確か、平均標高より2から5キロメートル高くて、低地だったら1から2キロメートル低いんだよ。
満:スケールが大きい…。
修太郎:高地にはクレーターが多くて、水の浸食を連想させる谷もあるよ。
満:水があったなら生物が住んでるかもしれないね。
修太郎:でも、こんなところじゃあね…。
かおる:ねえっ!お兄ちゃんたち。
満:うわっ。びっくりした。


<小さな女の子、かおるが岩の上に座っている。片方、靴を履いていない。>


かおる:お兄ちゃんたち、あの列車に乗ってきたの?
修太郎:そうだけど、君は?
かおる:あたし、かおる。お兄ちゃんたちは?
修太郎:修太郎
満:満
かおる:ふうん。修お兄ちゃんと満お兄ちゃんか。あのね、あたしもあの列車に乗せて。
満:え?何だよいきなり。
かおる:あたしね、お母さんを探しているの。だから、のせてって。
満:でも、切符とか…。
修太郎:満、砂嵐だ!
満:へ?
修太郎:ここにいたらまずい。早く列車の所へ!


<逃げ出す三人。ごおおっと凄い音。>


満:近づいてくる!
修太郎:巻き込まれたら終わりだ。
かおる:なんだか、冒険ってカンジ。
満:それどころじゃねえ!
修太郎:みえたっ!列車だ!!
満:もう、動き出してる。
修太郎:飛び乗るんだっ。


<音楽高まり汽笛。列車の中。静かに列車の音だけが聞こえている。>


満:ハア…ハア…助かったね。
修太郎:…なんとか…。
満:うわあ。ここからでも砂嵐が見えるよ。
修太郎:火星では巨大な砂嵐が数週間にも渡って吹き荒れることがあるんだ。
かおる:へえ。そうなんだ。
修太郎:あ…つれてきちゃった。…。ま、仕方ないか。そうだリンゴでも食べるかい?駅でもらったんだ。
かおる:ありがとう。
満:なんだか、すごくなつかしい…どうしてなんだろう。
かおる:さあ。
満:(何か大切な事を忘れているような気がする。なんだろう…リンゴ…汽車…星…僕はこのシーンを知ってる。本で読んだんだ。確か「銀…
かおる:あー!金星だ。
修太郎:本当に金色だね。
かおる:どんな星なの?
満:地球から見るとすごく明るくて、"宵の明星”とか”明けの明星”と呼ばれているんだ。
かおる:昔から?
満:昔は地球の双子星と呼ばれてたらしいよ。
かおる:ふうん。ね、金星って石とかが金で出来てるから金色なの?
満:そんなわけないだろ。太陽の光を反射して、光ってるんじゃないか。
かおる:なんで反射するの?
満:だから、それは…えっと…あの…どうだっていいだろ。
かおる:なんで、なんで、なんで、どうして、どうして、どうして
満:うるさい!
かおる:…満お兄ちゃんがおこったぁ(泣
修太郎:よしよし、かわいそうに。あのね、太陽の光をどうして反射するかというとね
かおる:うん。
修太郎:硫酸の雲で覆われているからなんだ。
かおる:へえ。雲の下はどうなっているの?雲がいっぱいあるから寒いのかなあ。
修太郎:ううん、違うよ。金星は、470度もの高温なんだ。
かおる:え!?なんで、そんなに暑いの?
修太郎:金星の大気を構成する成分が大きく違っているからさ。
かおる:どんな風に?
修太郎:二酸化炭素がすごく多いんだ。
満:それと金星の温度とどう関係があるの?
修太郎:まあまあ、どうして二酸化炭素が多くなったのかっていうことから話させてよ。
かおる:どうして多いの?
修太郎:それはね、金星が作られた間もないころ太陽の光が今よりも弱くて、金星は今の地球と同じような環境下にあったんだ。
かおる:えっ。じゃあ、海とかあったの?
修太郎:うん。そうだよ。
満:でも、今の金星は違うよね。
修太郎:そう、慌てるなって、今説明してるだろ。昔は、地球と同じような星だったんだけど、その後、太陽の光が強まって表面の水が蒸発して、水に溶けこんでいた二酸化炭素が出ていったんだ。
かおる:だから、二酸化炭素が多いのね。
修太郎:二酸化炭素が多いとどうなると思う?
かおる:えっと…どうなるの?
修太郎:それはね。温室効果が高まるんだ。
満:そうか、金星の高温は温室効果によるものなんだ。
修太郎:そう。地球よりもわずかに太陽に近い軌道を持った為に地球とは違った運命をたどる事になったんだね。
かおる:あっ。見て、水星!
修太郎:じゃ、乗り換えだね。でも、時間があるみたいだから降りてみようか。
満:うん。


<三人、火星に降りる。>


満:なんて殺伐としてるんだろう。まるで、死の世界。
かおる:太陽に一番近い惑星だから。太陽の強烈な輻射にさらされ昼夜で430度からマイナス160度以下まで変化するわ。
満:かおる…?うわっ
修太郎:気をつけて。水星には無限のクレーターがあるから。
かおる:昔、隕石の激しい衝突があったの。
満:かおる。水星に降りてからなんか変だよ。
かおる:直径100キロ程度の隕石が衝突した事もあるのよ。
修太郎:それは「カロリス盆地」と呼ばれている巨大なクレーターになったんだ。同心円状の構造を持つ多重クレーターで直径は1300キロにも及んでいる。
満:1300キロ?
かおる:水星の4分の1に近い大きさのクレーターなの。この衝撃波は、水星の裏側まで伝わって複雑な地形を作ったわ。
修太郎:きっと惑星の内部まで影響してるだろうね。
かおる:これと似た巨大なクレーターがある星知ってる?
満:…知らない。
かおる:それはね…なんだっけ。
修太郎:月だよ。
かおる:へぇ。そうなんだ。
修太郎:もしかしたら、月と水星は同じ進化の道筋を歩んできたのかも知れないね。
かおる:ふうん。
満:かおる…君は何者?
かおる:満お兄ちゃん。リンゴもしなびちゃったよ。
満:かおる?
かおる:…この星みたいにね。
満:この星はしなびているのかい?
かおる:見て、あそこにいくつものクレーターを突き抜けて走る長くて大きな断崖があるでしょ。
満:うん。すごく遠くまで見える。
修太郎:空気がないからね。
かおる:あの断崖は”リンクル・エッジ"と呼ばれているものなの。
満:リンクル・エッジ
かおる:あれはね、水星が作られて間もないころ冷えて惑星が収縮して出来たの。そのリンゴみたいにね。
満:しなびたリンゴの皺…。
修太郎:惑星全体が収縮した事を示す痕跡が巨大な断崖となって延々と続いているんだ。この月に似た惑星は。…さあ、列車に乗ろう。
満:(リンゴ…汽車…星…そうだ、これは昔読んだ事のある「銀河鉄道の夜」に似てる。確か、あの最後は…。)
修太郎:そうだよ。僕は死んだんだ。じゃあ、僕はもう行くよ。
かおる:あたしも連れてって。
満:修ちゃん…


<満、目覚める。河原。>


満:夢だったのか。(僕は、いつの間にか寝ていた。手には赤いリンゴを持っていた。)えっ、なんでリンゴなんか持ってるんだ!?リンゴ…あれ?夢…どんな夢だっけ?あっ!そんなことより早く帰らなきゃ。母さんも心配してるだろうな。


<汽笛。夜空には列車。川には赤い靴。列車の音高まり、フェードアウト。>


Fin.


2004.4.11.(1997.8頃作成)
モノクロワールド
     モノクロワールドとは、2003年から1年間、管理人ダウが書いていたテキストサイトのタイトルです。
テキストのシリーズには、「恋する女子達」という恋をテーマに書いた短いお話も入っていました。
このタイトルが今のサイトの名前の原型です。


今、モノクロワールドはなく、
いつ壊れるか分からないパソコンの中にひっそりとテキストたちはいます。
それは何だか寂しいなと思い、またひっそりとgirls in loveにアップしてみました。


検索でひょっこり来てしまったアナタ。
お暇つぶしによろしかったらお読みください。


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